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Ⅲ 中間評価結果

プロジェクト全体、及び各受託実施機関等について、書面評価及び面接評価による総合評価に基づく中間評価の結果をとりまとめると以下のとおりである。

1 全体評価

(1)プロジェクト全体について
 ○進捗・達成度について
 本プロジェクトは、平成18年度から開始されたプロジェクトであり、初年度は中核機関である情報・システム研究機構を中心としてフィージビリティ・スタディを実施した後、平成19年度より分担機関の3機関が、さらに補完課題実施機関の4機関が、平成19年度途中より参画し、本格的な実施体制が構築された。
 従って、補完課題実施機関に至っては約半年しか経っていないこともあり、全体的に見て目に見えて評価し得る成果が十分に出ているとは言い難いが、計画に対する進捗は順調以上に進んでいると評価される。
 特に中核機関においては正味2年間の研究実施期間に満たないものの、国内の300以上の極めて雑多なライフサイエンス分野のデータベースの横断検索、文献検索、統合ツールなど、見える成果として、短期間で公開できる段階まで到達した点は大いに評価できる。
 中核機関としては、プロジェクトの重要性や、その目指すべき方向性、さらにはそのために解決すべき課題については十分把握しており、このままの方向で事業を実施すればライフサイエンス分野のデータベースが現在抱えている問題の多くが解消されるものと期待する。
 ○事業推進体制について
 体制面において、中核機関、分担機関、補完課題実施機関の相互連携の姿や協力体制が、必ずしも円滑に図られておらず、一部で類似した開発項目や、中核機関からの期待に必ずしも符合しない開発項目が、分担機関等で実施されているといった機関間の意思疎通に係る問題が見受けられた。理想的な役割分担や業務計画の実現に向けて、本評価結果を踏まえたより具体的な議論が必要と思われる。
 ○総論
 平成19年度が実質的な立ち上げ段階ということもあり、今後、本格的な連携効果が出てくるものと思われる。しかし、これを加速させるためにも、より中核機関が主導的にプロジェクト全体を管理・運営できるような体制となるよう、後半期は見直すべきである。また、参画機関を含めた中核機関の研究体制を柔軟に見直す裁量を、中核機関に対して与えることが必要である。
 さらに研究推進に当たっては、研究運営委員会をより効果的に活用することで、中核機関、分担機関、補完課題実施機関といった現行の組織構造のあり方についても十分に議論し、抜本的な体制の見直しに向けた検討を早急に実施するのが望ましい。
 すなわち、中核機関の代表機関である「ライフサイエンス統合データベースセンター」の強力なイニシアチブの下、データベース戦略や方針に沿ってプロジェクト全体が統括・管理され、明確な参画機関各々の役割・機能により事業推進体制を整理することが、世界最高水準の研究基盤整備である統合データベースの実現に向けては不可欠であろう。
(2)全般的に見た今後の課題、助言等
 ○本プロジェクトの意義
・本プロジェクトは5年間であるが、単なる「プロジェクト」と見るのではなく、「日本国に必要なライフサイエンスデータベース確立の試行」として事業を進めることが必要である。
 ○プロジェクト終了後の今後あり方
・本プロジェクトは、日本のライフサイエンス研究の成果を集約させ、そこから新たなライフサイエンスの知識を生み出す場所の構築のため集中的に整備された。データベースは継続的に整備され、利用されることにより大きな価値が認められる。そのため、プロジェクトが終了した後、整備された「統合データベース」を維持し、発展させることが肝要であることは言うまでもない。
・そのためには、昨年度の総合科学技術会議の優先付けにおける指摘事項(「(統合データベースプロジェクトとバイオインフォマティクス推進センターについては、)一本化を含めた検討を行うことが必要」)を十分踏まえ、我が国のライフサイエンス基盤データベース(DDBJ、KEGG、PDBj等)を支え、推進してきた科学技術振興機構(JST)のバイオインフォマティクス推進センターに主な経費を一本化し、本プロジェクトの中核機関である情報・システム研究機構による戦略立案機能と、研究開発独立行政法人の事業としての「統合データベース」の維持・運用・高度化等を、有機的に連携させるべきである。
・また、研究室単位のデータベースを研究費交付と連動させて統合化させる等、将来的な統合化に向けた工夫や、完成後の維持を考慮し、少ない経費で維持できるような仕組みの構築に向けた積極的な議論も望まれる。
 ○プロジェクト内の事業の整理等
・「統合データベース」として何をどこまでするのかという全体構想を参画者で共有した上で、現在の事業推進体制の中での分担機関のミッションや、個別のデータベース開発の必要性について再度精査し、中止することも必要である。
・特に、汎用的、包括的なデータベースと、特定研究に特化した専門性の高いデータベースとのバランスについては、予め検討を行うことが望ましい。さらに、汎用的なものや、利用者が多く出ると予想されるものについては、商業的なベースを活用する等も検討すべきである。
・研究費の投入は新規データベース構築や新しい概念で既存データベースを組み替えるような作業を伴うものに選択的に投入されるべきである。つまり、既存データベースの維持管理については、事業化して民間資金の導入といった点も含めて検討してみてはどうか。
・統合データベースを支えて行くために必要とする人材育成は重要であるものの、本プロジェクトで実施している人材育成施策が「データベース整備戦略作業部会報告書」(参考資料(1))において求められている期待やアウトプットに沿っているのかの観点で再度見直すことが必要であり、限られた事業期間、予算内で対応すべき業務の優先順位を付けた上で、抜本的な整理を敢行すべきではないか。
 ○その他の課題、助言等
・中核機関へのバックアップにより、省庁連携統合データベースを促進できる体制を担保すべきである。
・他省庁の主導するライフサイエンスのデータベース、特に医療や健康維持に関する情報とこれからどのように連結していくかと言う課題を念頭に置きつつ、検討を進めて行くべきである。
・メンバーに医学、医療の事情を熟知した研究者を加えると臨床情報との連結がより有効に行えるであろう。分子の統合データベースからライフサイエンス全体の統合データベースへと発展することを期待する。
・市民向けのコンテンツが少し不足しているように感じられる。昨今の市民意識の高まりを考えると、先端研究の内容を噛み砕いて市民向けに開放する作業が必要な時代になっていると強く感じるので、将来的な構想としてこうした観点からのアプローチも期待する。
・本データベースの利用者を増やし、利便性を高めるために、広くモニターを募って定期的に報告を求める制度を始めてはどうか。
・中核機関や分担機関の東京大学グループでは、計算機資源の不足問題が挙がっている。計算機リソースについて、公共の既施設を無償で(廉価に)使えるような仕組みや、支援する仕掛け、あるいは共用できる方策等について検討すべきである。

2 個別評価

(1)中核機関(代表機関名:情報・システム研究機構、代表者:高木 利久)
 ○進捗・達成度について
 「辞書の整備」、「知識の整理棚」、文献のオープンアクセス化をにらんだ技術開発、日本語雑誌や学会用紙の検索、教育用教材、ポータルサイト作成、データベース受け入れなど様々な試みがなされ、利用者の利便性向上が緒につき、データベースの統合化が具体的に動き出したことは評価される。
 またデータベース構築者のために公開されるデータ全てをダウンロード可能とするといった統合に向けた方針は、より多くの利用者と波及効果を期待できることから望ましい方向である。今後、質の高いデータをより多く蓄積するための取り組みが期待される。
 我が国における中核機関として短期間にこれだけの進捗を見せていることを十分に評価するべきと考える。こうした取組を確実に進めていくためにも、中核機関に相応しい予算配分の再構成が必要である。
 ○事業推進体制について
 一方、中核機関の役割は、自らが成果を挙げると同時に、分担機関あるいは補完課題実施機関と上手く連携して相乗的に目標を達成することにある。しかし、一部の参画機関は必ずしも中核機関の認識どおりの意識にはなっていないようにも見受けられ、連携が不十分である。これはプロジェクト発足当初において、中核機関に指導、連携に関する権限が明確に与えられていないことによるものと思われる。
 ○総論
 非常に大きなミッションであり、きわめて重要な課題を扱っている。多様な参画機関、分担機関、補完課題実施機関のコントロールが必要であり、現在の中核機関のパワーだけに任せるのは不十分であり、より強いイニシアチブを持たせるべきである。問題と改善策に対しては、研究運営委員会における早急かつ十分な議論を望む。また中核に相応しい予算配分の再構成が必要である。
 今後(プロジェクト終了後)統合データベースをどのような体制で進めるかの検討(コンセンサス)が必要である。この予算でできること、できないことを整理しておいた方が良い。
(2)分担機関
①京都大学(代表者:金久 實)
 ○進捗・達成度について
 化合物に関するソフトウェア整備、医療医薬品、一般用医薬品に関するデータベースの公開、LinkDBの対象データベースの拡張、などについて妥当な進捗が見られる。また、本統合データベースはゲノムネットとKEGGを分離し、前者のサポートということで、明確な切り分けをしており、KEGGとのリンクは有機的に進められている。さらに国内(JAPIC、LipidBank)のみならず、国際データベースやIUPACとの連携も視野に入っており、継続支援は重要である。
 ○事業推進体制について
 中核機関との連携について、どのようになされているのか、姿が良く見えない。連携は発足当初に考えられていなかったので、そのための話し合いで取り入れた医薬品、化合物データベース構築については、配分比率が高過ぎると思われる。
 ○総論
 ゲノムネットの医薬品データベースは大学等の研究者または学生にとって、または薬に関心のある一般利用者には有用なデータベースであるかも知れない。しかし、創薬に係る研究者など医薬品企業等の産業界による利用まで考えるならば、JAPICなど廉価で手に入る情報とのリンクではなく、別のあるいは独自の情報とのリンクが必要ではないか。また、当該分野については、便利な有料のデータベースが揃っている点を踏まえつつ、魅力ある検索法を提案するなどの別の方策が必要である。
 またプロジェクト全体予算(11億円)の中で、ゲノムネットのDBGET/LinkDB解析ツールの開発費用が整合性を持って配分されているのか、また補完課題実施機関の産業技術総合研究所が担っている糖鎖関係のデータベースや中核機関が開発している検索エンジンの開発等において、各々の役割分担が曖昧になって整理されていない開発等が見受けられる点を考慮して、予算配分については適正に査定する必要がある。
 さらに、当該機関が持つポテンシャルであるKEGGの強固な基盤をどのように役立たせるかについてより深い議論が中核機関との間で必要である。
 こういった観点も踏まえ、限られた全体予算の中で効果的な成果を上げるため、利用者のニーズに真に応えるためにどうすべきかを研究運営委員会等で議論すべきである。
②東京医科歯科大学グループ(代表者:田中 博)
 ○進捗・達成度について
 ライフサイエンスのデータを分子から臨床にいたる多階層の視点からデータベースを構築するという姿勢は評価できる。未だ例数が少ないので評価が難しい。
 2つのデータベースをモデル的に構築しようとしている方針は評価できる。しかる後に、そのモデルをどのようにして国内に広めて行くのかについて確たる見通しがないのが不安である。
 特定の医師(場合によってはcomedical)が限定しているデータベースとしては適当だが、中核機関の姿勢とそぐわないのではないか。
 ○事業推進体制について
 本データベースの構築に当たっては、疾患記述の標準化など日本全国にインパクトを与える可能性のある重要な事項が散在している他、中核機関との連携の姿が不明確である。
 ○総論
 限られた予算規模及び時間で一定の成果を出すためには、取組内容について、優先順位を考えた上で、フォーカスを絞る必要があり、インフォームドコンセントが必要となるなど、その統合に際して大きな困難が予想される医学情報のデータベース作りに向けて「自力で出来ること」を中心に進めるべきである。つまり、データベース開発を目指すのではなく、中核機関が目指すデータベースの統合化に向けて、臨床関係のデータベースはどう統合していくべきか、何をすべきか、何が重要かといった統合に当たっての課題に対する提言や、フィージビリティ・スタディ的なプロトタイプを小規模に作る等のロールモデルの提供に徹するべきである。
③東京大学グループ(代表者:徳永 勝士)
 ○進捗・達成度について
 GWAS (Genome-Wide Association Study)は世界の潮流であり、理化学研究所以外のGWAS中核として、国内のデータ保有者と連携の下、多数の施設に亘る共同研究をベースとしたオールジャパン体制で進めており、ナショナルプロジェクトに相応しい。到達目標(アジアのハブ)も明快である。このまま継続されるべきである。
 データの品質管理、及び標準化を行うという研究内容は評価できるものであり、限られた予算内で期待される達成度を満足している。
 ○事業推進体制について
 また、中核機関の方針に馴染んだマネジメント体制が取られていることも評価される。さらに、標準SNPデータベース、GWASデータベースとも平成19年度計画を十分達成しており、成果は着実に上がっている。
 ○総論
 今後は、一層のデータを集めるとともにデータを解析する努力が必要であり、特にこのデータベースにどの位のデポジットがなされ、どう発展させるかが重要である。
 疾患解析のデータベース構築の際に発生しうる問題点を整理しつつ、小さくても「モデル的データベースの構築」を示して欲しい。
 また、計算機資源、データ解析能力の充実に向けては、中核機関との密接な連携が必要であり、両者の一層の協調と協力体制の確立が必要であるが、計算機資源については、公共的なスーパーコンピュータの利用等のコスト便宜にも配慮すべきである。
(3)補完課題実施機関
①理化学研究所(代表者:豊田 哲郎)
 理化学研究所の多数あるデータベースを利用しやすいものとするとともに、付加価値を付け統合データベースに組み入れていくテストケースとして、当該取組みの意義は大きい。
 主として理化学研究所で行われたシロイヌナズナのオミックス、タンパク3000プロジェクトからの高等動植物由来タンパク質の構造データ、微生物由来蛋白質構造データなどを用いて、そのアノテーションなどの構築、およびアノテーションシステムの開発運用の研究について、研究体制は適格に構築できており、時間的な問題も考えると、順調な準備段階であると言える。
 今後は、分野毎の国内他機関との連携の構築と、理化学研究所内のあらゆるデータを積極的に公開する方向に進んでいただき、中核機関の期待に沿うよう盛り立てていただきたい。
②産業技術総合研究所(代表者:成松 久)
 中核機関との役割分担が明確になって、最もすっきりした関係になっており、糖鎖関連という特定の領域で情報基盤の整備・有効利用が促進されることは関連分野の活性化にとどまらず、データベース統合化のモデルケースとしても評価できる。
 利用者コミュニティが比較的まとまっているので、コミュニティとの意見交換を通して、利便性の高いデータベースを作成することが容易な状況にあると言える。一層の努力を期待する。
 この種のデータベースにおいては、素材自体の重要性も考えられ、特に利用者を幅狭く想定しないのであれば、「自前」のデータのダウンロードなど様々な利用者のニーズに備えていただきたい。
 今後は、プロジェクト終了までになるべく多くの関連データベースの統合を進めていただくとともに、中核機関と連携して、他の分野とも連携したより上位の統合の具体策を検討していただき、中核機関の期待に沿うよう盛り立てていただきたい。
③国立遺伝学研究所(代表者:五條堀 孝)
 公開ftpサイトとWWWサイトに関する開発については、国内主要機関との連携により統合システムの準備段階である。登録処理及び波形表示システムに関する開発についてはシステムの設計、プロトタイプシステムの完成、手法の開発のための情報の調査中の段階である。本プロジェクトが始まって時間が経っていないので、達成度は十分ではないものの概ね妥当である。
 ただし、中核機関との連携においては、その目的から鑑みるに、例えば「新しい種類の、あるいは新しい発想に基づくデータベースの開発支援」のような新しい連携のあり方が構築できれば、一層統合データベースへの貢献がなされると考えられる。
 今後は、新型DNAシーケンサの出現により、今後塩基配列データの生産量あるいはその研究対象領域の急速な拡大が予想されるため、単に従来型のトレースアーカイブデータベースを構築するだけでなく、将来を見据えたシステムのあり方を検討していただき、中核機関の期待に沿うよう盛り立てていただきたい。
④九州工業大学(代表者:皿井 明倫)
 データベース自体の重要性というよりは、小規模データベースと統合データベースの関係のモデルケースとして重要と思われる。
 熱力学データと構造データの統合データベースを構築・提供することによって中核機関に対する保管機能は十分果たされている。XML化、オントロジー調査はサービスの質の向上に相当するが、データベースそのものの今後の改良とともに、中核機関と連携して中・小規模のデータベース構築者に適用しやすいシステムあるいはツールの開発も期待したい。
 理化学研究所、大阪大学(PDBj)と打合わせを持ちながら課題を遂行しており、データベース構築も順調であることから課題マネジメントも問題はないと思われる。
 今後は、巨大機関ではなく研究室単位のデータベース構築者としての統合データベース構築参加のモデルケースとしての役割を続けていただき、中核機関の期待に沿うよう盛り立てていただきたい。
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総合科学技術会議(第70回、平成19年10月29日)資料1-2「平成20年度概算要求における科学技術関係施策の優先度判定等について」、p.11 特記事項:
○継続性をいかに担保するかが重点課題である。
○JST-BIRDとの連携について、将来的な一本化を含めた検討を行うことが必要である。
○データベースを作るのみにとどまらず、常に改訂していくことが必要である。

ゲノムネット(ゲノム情報を基盤とした新しい生命科学研究と創薬・医療・環境保全への応用を推進するために、京都大学化学研究所バイオインフォマティクスセンターが提供するインターネットサービス。)

JAPIC(財団法人日本医薬情報センター。国内外の医薬品に関する臨床的に有用な情報を収集・処理・提供することによって、薬剤の臨床使用の適正化を通じて製薬と医療の間のかけ橋の役目を果たすことを目的に設立された公益法人。)

IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry。国際純正・応用化学連合。元素名や化合物名についての国際基準(IUPAC命名法)を制定している国際学術機関。)